平成三十年七月の豪雨で裏山が崩れた。大木が家に覆いかぶさり、調査に来た県の職員に「上に亀裂があるので雨の日はいない方が良い」と言われた。
二カ月ほどレオパレスにいたが、土留めなどの工事は遅くなりそうだったので、中古の小さな家を購入して転居した。被災者としてだけ生活するには残りの人生が少ないと思ったのだ。野良猫を捕まえて不妊手術した飼い猫のこともあった。
裏山が準民有地だったことなどから工事などの見通しがつかず、家の損壊が小さい(でも水道やガスは使えない状態。また裏山の亀裂がなくなったわけではない)ので、補助がほとんどなかった。転居のこの時期、経済的な問題を中心に不安が大きかった。ただし、被災に伴うことは流動的な面があるので、今は触れない。
不安なときに、内にこもっていても、ろくなことは考えない。いっそ仕事にでも行こうかと探してみた。最初はどこか図書館の遅番要員がないか、と知人にも尋ねたが、現在は学生支援が重要視され、多くは学生を雇用しているということだった。あるいは派遣が定常化しているとも教えてくれた。それに、後期目前だったのですでに要員が確保されており、求人自体がなかった。
とにかく行動していなければ負の思考から抜け出せそうになかったので、ハローワークにも登録してみた。年齢制限のなさそうな三社に応募してみたところ、一社だけ面接をしてくれた。
応募した仕事は経験がなかったので落ちたが、「経験が生かせそうな仕事」として、他の部署の求人を紹介してくれた。評価してくれたのは図書館の経験ではなく、ネット古書店としてレンタルサーバ上でデータベースを構築したり、ホームページを公開した経験だった。
担当部署の責任者との面接があり、ありがたいことに契約社員として採用された。仕事は瞬発力の衰えた小生には緊張を要するもので、毎日の研修が終わるとかなりぐったりした。ただし、退職以降そのような緊張や疲労を味わうことがなかったので、心地良かった。接した人達はみな良い人だったので気持ちが良く、若い仲間ができたようで少し嬉しかった。