白河紀行

Help-Toshokan参加私記02

1.出発まで

 前回(東北支援ボランティア01)は、物語や読書をライフワークの一つと考えているよみもの屋にとって有益な体験であった。 しかし、被災地を支援する者として自分自身がまったく役に立たなかったと感じていた。現地に行ったことによって被災地域への思い入れが強くなったためもあって、心残りの思いがくすぶっていた。 第1期の参加者のメーリングリストなどができ、情報が入るようになったので、家族を拝み倒していくつか参加希望を出した。
 今回は、福島県矢吹町図書館で、割れた蛍光灯の飛沫を浴びた図書5000冊の清掃である。
 荷物整備:着替え・寝袋(ホテルなどは営業しているが、寝具のない宿泊施設に泊まった) ・洗面道具・Help-Toshokan のベスト・手袋・マスク、エプロンetc。寝袋を持って行くために背負子を使った。 下にデイパックをつけて上に寝袋。結構めだったかも。ネットで夜行バスの切符を買った。日付や席は変更できないが、格安(片道5500円)。 

2.岡山から白河まで

6月28日(火)

備前原(20:03)−津山線-岡山駅(20:10)
【←ままかりライナー】
時間を間違えて遅れそうになった。アリナミン(単純作業の持久力対策)購入。酔い止め呑む。岡山駅西口発(22:10) 夜行バスで東京へ行くのは初めて。少し緊張。窮屈。もっと良いシートのものも聞いたことがあるが、料金が安いものはこうだ。 前の女性がめいっぱい椅子を倒すのと、よみもの屋自身が大きな荷物を中に持ち込んで空席だった隣の床に置いたせいで、動きがつかない。でも寝るのは寝た。

6月29日(水)

7時前 上野駅に到着。
 朝も開いている居酒屋で朝ご飯(サバ焼き定食)。
 上野(8:13)−<東北本線快速>−宇都宮(10:03) 白河まで直行すると、時間があまりそうなので、行ったことがない(と思う)日光へ。

宇都宮(10:35)−日光線−日光(11:17)
JR日光駅から東照宮まで歩く二荒神社神橋がかっこよかった。眠り猫は不細工。 我が家の猫の方がかわいい。鳴き竜は良かった。でも説明したすぐ後に、お守りのセールスをするのはどうかねえ。「東日本大震災早期復興祈願」とかで、祈祷料が1000円と2000円 というのも不思議だった。
 徒歩でJR日光駅まで。途中でチーズケーキと珈琲+メンチカツパンで昼ご飯。

日光(14:20)−日光線−宇都宮(15:01) 

宇都宮(15:20)−東北本線−黒磯(16:13)

黒磯(16:33)− 東北本線 − 白河(16:58)
JR白河駅は大正時代に建築された瀟洒な建物。向かって左側に駅Cafeがある。かき氷を食べる。駅Cafeで高校生が何人も勉強していた。
ちなみに図書館は移転のため休館(新館への移転は元々進行中の計画だったが、震災のため開館が遅れたようだ)していることも関係しているのだろうか?

駅舎の隣にある観光物産協会で無料レンタサイクルを借りて、市内散策(ワンコイン=500円レンタカーもあるらしい)。



白河 小峰城
残念ながら復元だが、三重櫓が美しい。夕暮れ迫る。良い風景だ。

震災で、石垣が壊れていた。
 今回の震災では津波の被害はもちろんのこと、地震の被害も大きい。そして原発事故の被害。白河市でも表土をはぐ作業が行われていた。
 市役所に放射線測定の看板も出ていた。

白河ハリストス正教会
ニコライ堂、千葉県匝瑳市の須賀教会、以来見学3つめの正教会。もっともここは中には入れなかった。
近くで本屋を見つけ、文庫本を1冊購入。

白河(18:08)− 東北本線 − 新白河(18:11)
この日は新白河駅近くのホテルに泊まった。夕食は海鮮丼定食。

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3.矢吹町

6月30日(木)

新白河(8:18)− 東北本線 − 矢吹(8:37)
 駅舎の売店(小さな土産物センターみたいになっている)で金平糖を買う。列車の中で大学生らしい若者を数人見かけたので売店の人と話す。こちらから聞いたのではないが何となく放射能の話になる。
 駅前の道路が地震で陥没?している。歩いて矢吹町図書館まで行く。

矢吹町図書館
まだ開いていない。門の近くにいたら、9時に職員さんが来た。9時20分頃、「ボランティアの方ですか?」と尋ねられ、 中に招じ入れられる。お茶を頂く。今まで見学した、町立図書館の中ではきれいな建物。
 煉瓦を敷いた地面があちこちひび割れて、砂で埋めていた。壊れた備品を置いて、ブルーシートをかけている。館内見学。本の並び方が右から左。独特だ。 翌日尋ねたら、最初からそうだったらしい。
 
10時過ぎから作業に入る。10時30分頃車組到着。

参加者は、リーダー?以下10人。
 過去の参加者のメーリングリスト、日図協のホームページなどで募集された。
 多摩や千葉からはせ参じたお掃除隊。西日本からはよみもの屋。

作業場所
ここに10人が座って作業

本を1冊取って1ページずつめくって、 刷毛できれいにする。そんなに汚れていないが、時々灰色の粉のようなものが・・・ ビニール袋をかぶせた箱に少しずつ溜まる。50分作業して10分休み。お昼は1時間休み。

この時間割?で17時50分まで作業をする。

 お昼はガスト。僕は野菜たっぷりインドカレー。

 地元紙「あぶくま時報」が取材に来る。
 (2日間で町の教育長などが挨拶に来られた)

 終了後、「いやさか」という温泉付き食堂へ行く。定食かうどんを食べると無料で温泉に入れる。
 量が多い。他の人が頼んだメンチカツのでかかったこと。僕はミックスフライ定食。温泉は少しぬめりがある感じ。

 夜 創作の館、宿泊。男女それぞれ1棟。芸術家に安く提供して、創作活動をしてもらうために造った施設ということだった。
    反省会。みんな自己を語り、図書館を語り。ついよみもの屋も・・・(古本屋の話ではない。古本屋の話ができるほど経験もない)。

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7月1日(金)

 朝6時起床。
大池
宿舎があるのは大池という池を巡る公園の一角。緑がきれいだ。散歩中に雨が降る。 一瞬放射線のことを思う。確か矢吹町は福島原発から65キロくらいだった。 地元新聞やテレビでは、前日の放射線量の測定値を報道する。大変な情況の中で人々は暮らしている。早朝散歩している地元の人も結構いる。
後で調べたら、大池公園は比較的高かった(植物が多いからだろう)。
日本庭園があり、手前の池には大賀ハスが咲いていた。鴨がいたので地元の人に聞くと合鴨が4羽他は鴨だと教えてくれた。大池ももっと水が多い らしいが、どこかが壊れて水量が落ちているとのこと。その人の自宅の風呂は壊れたままで風呂に入れないと言っていた。
 まだそんなのか、と思った。そういえば、あちこち壊れた場所がある。

朝ご飯は昨日コンビニで買ったパン、キュウリ、珈琲とスープ(コンロは利用可)など。

 9時過ぎ図書館到着。今日本来休みの担当者が出てきてくれていた。9時半少し前から作業。
 50分作業、10分休み。
 昨日は50分で3冊(4冊いく人もいる)。今日も最初はそんなものだったが、やり方を変えてから速度が上がった。
 本を手で持つのではなく、段ボール2個ならべて、その上に置く(刷毛でゴミを落とす方の箱はうまく折りを入れて本を置けるようにする)と早い。最後は50分で7冊くらい行った、ただしそれは午後。
 昼ご飯は、ウナギ料理と寿司の店。よみもの屋はウナギ丼定食。小さく切ったウナギ、鰻丼は大きいウナギがあうと思う。地元の人とはやっぱり放射能の話になる。別のところで聞いた話だが図書館の近くの幼稚園は園庭の表土を剥ぐそうだ。

のら文庫入口
  食後、「のら文庫」を見学に。「のら文庫」とは矢吹町図書館の指定管理者であるNPO法人が運営している子育て支援の文庫のようだ。 何でも見たがり知りたがりの僕は、お二人の仲間と一緒に地図を頼りに探した。直角でなく、斜めに交差している交差点が不思議。 一カ所でなく何カ所もある。なかなかみつからなかったけど、やっとこ見つかった。
管理者はちょうど出かけよう(図書館へ行こう)としたところで、中を見学させてもらう。内部は山小屋を連想させる木造。良いなあ。前回知った読み聞かせに加えて子育て支援活動をかいま見る。少し遅いかなあ。
 こんなところで昼寝したら楽しいだろうなあ、と思う。(後で、「今度来た時は、のら文庫で昼寝させてください」と冗談半分に言ったら、困った顔をされた。そうだね、冗談を言う情況ではなかったのかも)。

のら文庫の人の車に乗せてもらって図書館へ戻る。

 千葉から来た組は14時、多摩組(Y氏のキャンピングカーに乗せてもらうことになってこちらの組)は15時まで。

掃除済みの本を入れた段ボール
2日間の成果。段ボール9箱。400冊くらい?(後で責任者から配信されたメールを見ると340冊)とあった。
 まだ大量に残っている。
 今回の支援隊のリーダーS氏が、今後の対応策について、矢吹町図書館の館長さんと話し合った。
 結論は出ていないが、何らかの形で支援を継続するということだった。

 18切符の季節に、もう一度くらいなら来ても良いな。

4.岡山へ帰る

Y氏の車で東北道へ。那須高原SAでおみやげ休憩。また玉こんにゃくを食べる。東京に近づくにつれ怖いくらいの土砂降りが続いた (大雨洪水警報が出ているのを後で知った)。前が見えず、道は川のよう。 落ち着いたY氏の運転はさすがである。でも車中4人は緊張のせいか誰も居眠りしなかった。 なんとなく話がはずんだ。

 新宿でおろしてもらって、都庁の横を通って、JR新宿駅まで連れて行ってもらう。都庁は初めて見たけど、風情のない建物だな。都会のビルはあんまり興味がない。お金をかければできる、と思えるものが多い。

 新宿−東京駅
東京駅の地下街をうろうろ。立ち食い寿司で夕食。帰りのバスの停留所が分からなくて、派出所で尋ねる。巡査がいろいろ調べてくれた、その派出所の横であることが判明!

22時10分発  週末だから来た時より多い乗客。やっぱり窮屈。それでも寝た。

7月2日

 6時50分 岡山駅西口着 キャンピングカーから続けると12時間くら車に乗っているので、最後は少し気持ち悪かった(悪いというほどではない)。
     7時ちょうどの津山線が少し遅れたので間に合った。帰宅。
 
 福島は緑したたるところです。放射線は怖いけど、離れがたいというのは分かります。 生活の問題もあるしね。次からは別の支援に行く予定だけど、支援でなくてももう一度福島に行きたいと思います。  緑を堪能して、温泉に入って、歴史を尋ねたいと思います。それまでに原発が安定状態になっていれば良いな。

7月7日

 矢吹図書館の方からのお礼のメールがメーリングリストに流れた。偉そうなことをいう資格は僕にはないけど、支援というのは被災にあわれた地域の方々が元気をとりもどすお手伝いをすることだな、と思った。
 
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*ボランティアというのが外来語であるためか、自分自身になじまない。前回は被災ばかりに意識が向いた。被災の怖さを忘れたわけではないが、今回は被災地の自然の豊かさが心に浸みた。それで紀行とした。なお矢吹町は西白河郡である。

東北支援ボランティア01

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